「審査期間の短縮に伴う知的財産権の戦略」関西特許情報センター振興会ニュースNo.9

審査請求期間の短縮化に伴う知的財産権の戦略

特許事務所 富士山会 弁理士・行政書士 佐藤富徳

審査請求・審査請求期間・短縮化・早期審査・早期権利化・早期特許化・戦略・ベンチャー企業・公開・発表・プロパテント

目次
1.はじめに
2.審査請求期間の短縮化の法改正
2.1改正趣旨
2.2改正内容
3.知的財産権の戦略
3.1早期権利化
3.2業務平準化について
3.3ウォッチング
3.4外国における権利取得
3.5ベンチャー企業戦略
3.6公開と発表について
4.結論
5.おわりに


1.はじめに
我国におけるプロパテント政策の推進を図るべく、我国の知的財産の保護の強化として、知的財産の「広く、強く、早い保護」1)に向けた一連の法改正が行なわれてきた。
そして、知的財産の早い保護の一つである審査請求期間の短縮化は、既に法改正されており、平成13年10月1日の特許出願から既に適用されている。
そこで、審査請求期間の短縮化に伴う知的財産権の戦略について論じることとする。

2.審査請求期間の短縮化の法改正
2.1改正趣旨
「広く、強く、早い」権利保護により、日本版プロパテント政策の推進を図ることとしている。来るべき21世紀は、知的創造活動が一国の経済成長と企業利益を左右する、いわば「知恵の時代」であり、我国の知的財産権の質と量の確保2)を図っていくことこそが、国富政策の拡大の源泉となろう。審査請求期間の短縮化は、早い権利保護政策の一環であるというべきものである。
(1)権利取得の早期化
権利取得の早期化を図り、知的創造サイクルを加速化することによって十分な投資の回収が可能になり、企業等の創造型技術開発のインセンティブが向上する。
特に、中小・ベンチャー企業にとっては、資金調達や大手企業への対抗手段としての早期権利設定が必要となる。プロパテント政策は、日本の国益であるし、ベンチャー企業を興す場合、付加価値に対する権利を保護することは、日本を変えるプラス要因になるので、さらなる保護強化、保護のスピード化が必要となる。
(2)権利確定の早期化による新たな技術開発・事業化の促進
従来の審査請求制度においては、最長7年の長期にわたり権利の帰趨が未確定な出願が大量に存在している。現時点では審査請求されていないが、今後審査請求がされる可能性の有る特許出願件数は214万件にのぼっている(平成9年末時点)。 こうした大量の不安定な出願が存在するため、以下のような不利益を第三者に与えている。
○その後の補正により明細書の範囲内でクレームを自由に変更できるため、事業を進める第三者が特許権を侵害してしまうおそれが有る。
○特許侵害をおそれるあまり、不当に広いクレームであっても製品の設計変更や代替手段の準備を強いられる。
○審査請求や補正の有無を常にウォッチングする必要が有る3)。
(3)我国の審査結果の国際的活用
我国の審査結果が国際的に尊重されるようにし、安定した外国特許取得を可能にすると共に、諸外国の審査協力に資するべきである。
2.2改正内容
  旧法では、審査請求ができる期間は出願日から7年となっていたが、平成11年改正法により、出願日4)から3年5)に短縮され、既に平成13年10月1日以降の特許出願から施行されている。
出願日から3年以内に審査請求をしない場合、特許出願は取下げ擬制され、せっかく支払った出願費用が無駄になることにも注意を払うことが必要である。

3.知的財産権の戦略
上述したように、審査請求期間の短縮化を図る改正趣旨に沿った知的財産権の戦略を探求することが重要であろう。すなわち、制度趣旨を活かすように、改正された制度及びその関連制度を極力活用していくことこそが、好ましい知的財産権の戦略と考えられる。なお、審査請求期間が出願日から3年に短縮化された制度を新制度といい、審査請求期間が出願日から7年の制度を旧制度ということにする。
3.1早期権利化
新制度の施行を迎え、審査請求をして権利化を図るか否かの判断が、出願日から3年以内に行なわれることになった。 従って、好むと好まざるとを問わず、旧制度に比較して早期権利化が図られることとなろう。さらに好ましい知的財産権の戦略としては、早期権利化の戦略をより積極的に推し進めることが必要となろう。
(1)知的財産権の価値の早期評価
新制度下、出願日から3年以内には審査請求をするか否か評価・検討しなければならない。メーカーと売り込み交渉する者は、交渉前に特許取得している方が良い。一般的に、知的財産権取得を先延ばしにしてきた体企業体質から、知的財産権の価値の評価を前提にした早期権利化の企業体質に切り替えていくことが、特許戦略としての意義が大きいと思われる。
知的財産権の価値の評価は、特許性、権利性、経済性で評価すべきであろう。
特許性は、特許になる可能性が有るかどうかで評価するものであり、権利性は、権利内容についての価値評価であり、請求項記載発明が広くて強い保護を受けうるかどうかで評価されるべきである。広くて強い保護を受け得る発明は、特許性が逆に少なくなるという二律相反関係に有ることにも留意すべきであろう。
経済性の評価は、キャッシュ・フローに基づいた正味現在価値評価法によって評価するのが良いと考えられる(添付資料を参照)。正味現在価値評価法は、自ら事業を行ない収益を上げる場合、ライセンス収入を得る場合、クロスライセンスする場合の何れにも適用できるので、優れた経済性の定量的評価手法と言えよう。
正味現在価値と審査請求率は密接な関係が有り、審査請求期間が7年であれば、審査請求率が50%であるが、審査請求期間が0年に短縮すれば理屈の上で審査請求率が100%になる。審査請求期間が短縮されれば、経済性の評価はより困難となることは当然予想されるところである。従って、審査請求期間が3年の審査請求率は約80%となることが予測されよう(図1、添付資料を参照)。一方特許性と権利性は、出願時であっても審査請求時であっても、それ程評価の困難性は変わらないと言えよう。
(2)早期権利化の具体的手段
@出願時の評価の徹底による高質出願
言い古されたことであるが、出願時の評価に基づいて高質出願をすることが重要であろう。そのためには、出願時調査6)を行ない、調査結果に基づいて出願原案の評価を行なう必要が有る。出願の際の早い段階で、この発明が特許になるだろうことをライバル会社に先駆けて知ることは非常に重要である。出願の際に出願明細書案を評価・検討し、内容が不十分であれば、出願明細書を書き直して、レベルアップした高質出願をするのが良い。出願時の評価の徹底により、特許性、権利性についての評価を反映して、高質出願に仕上げて出願する方が、出願人、特許庁、第三者にとって利益が有ると考えられる。出願人にとっては、費用、労力の軽減に繋がり、特許庁も価値のない出願手続のために 国家の優秀な資源を消費するのは国益に反することになるからである。第三者にとっても、特許になるとは考えられないような出願であっても、ウォッチング等のために無駄な労力と費用の浪費に繋がるからである。
A出願と同時に行なう審査請求
売上高が計上できた商品に係る出願については、経済性の評価は比較的容易であろう。経済性をクリアした出願は、出願と同時に審査請求を行なうのが、早期権利化政策にも合致し望ましいであろう。
なお、審査請求期間が出願から7年と長い旧制度下7)では、審査請求期間ギリギリまで待つのが有効であったが、新制度下では、ギリギリまで待っても審査請求率の低下はそれ程期待できないと考えられる。従って、新制度下では、出願と同時に審査請求をする出願はかなり増加すると考えられよう。
B早期審査制度の活用
新制度の狙いは、もっと積極的に早期権利化戦略を要求することに有る。このためには、出願と同時に審査請求をすると共に、早期審査制度を活用することが考えられよう。早期審査制度とは、特許庁に事情説明書が提出された出願について審査官が速やかに審査を進める制度をいう。個人又は中小企業、あるいは大学又は公的研究機関の出願の場合は、実施していなくても早期審査制度を活用することができる。そして、外国出願をしている場合にも、無条件で早期審査制度を活用して早期権利化を図ることができる。8)
早期審査の対象として選定された場合、早期審査の申し出からファーストアクションまでの期間は、案件にもよるが平均3ヶ月〜4ヶ月で、通常の12ヶ月9)より早くなっている。拒絶理由通知を受けた場合、面接等を利用して相互の意志疎通等を通じて早期審理を図ることができる。出願公開準備期間経過前に特許性有りの審査結果が送付され、早期権利化が達成される。このようにすれば、出願が特許になる目途が立った後に出願公開され、出願公開によりリーディングカンパニーである旨のPRがされることになろう。
なお、出願公開前に特許されれば、第三者からの情報提供を受けることはなく、特許後には、異議申立、無効審判請求され得るが、匿名でされることはないので、権利者側にとって有利となろう。
CPCT出願制度の活用
自己指定したPCT出願は、我国の国内出願でもある(PCT条約11条(3))。サーチリポートと国際予備審査の見解を活用するPCT出願特有の戦略が考えられるので、以下それを紹介しよう。
PCT出願をすれば、2ヶ月〜3ヶ月でサーチレポートが送付されてくる。そこで、自ら行なった出願時調査結果と比較検討することも可能であるし、さらに国際予備審査請求をすれば、国際予備審査の見解を得ることができる。
国内出願について、少し早めに優先権主張をして、PCT出願をして、サーチレポートを早めに受取ることができれば、国際公開される前に優先権主張を取下げること、あるいはPCT出願を取り下げることも考えられよう。これにより、国際公開を遅らせることができ、後のPCT出願を基礎にPCT出願をすること、あるいはPCT出願をやり直すことで権利化を図ることができよう。なお、PCT出願を代理人に出願依頼すれば、一出願当り約60万円程度の費用が掛かるが、自社出願すれば、約20万円(オフィシャル・フィーのみ)で、サーチレポート、国際予備審査の見解が入手できるので、投資対効果の点からも、非常に有効な戦略となり得よう。
D公開技報、早期公開制度、IT技術の活用
権利内容が十分確保され特許性も確実になれば、残る問題は極力他人の権利化を排除することである。そのためには、出願内容を公開技報、早期公開制度、IT技術を活用することによって、公知技術(自由技術)とし、他人の自由技術範囲の権利化阻止を目的とする戦略が有る。なお、平成11年改正法により、インターネットに掲載された発明は公知発明として扱われることになっている。
競争の激しい技術分野では、1年半程の間に類似の出願が幾つかなされ、それぞれが特許となる場合もしばしば見受けられる。先願者は、このような状況を回避すべく、自らのみがリーディングカンパニー足り得ると確信できた時点で、躊躇することなく自らの出願に係る発明を即座に公開し10)、後発メーカー等に対して引導を渡すようにするのが、シタタカな戦略であろう。なお、自らがリーディングカンパニー足り得ると確信できる前に、研究発表するのは絶対に避けるべきであろう11)。予想外の先行文献が発見された場合、早期権利化作戦に支障をきたすのは必然だからである。
3.2業務平準化について
毎年多数出願している会社の場合、改正前の出願の審査請求の期限と、改正後の出願の審査請求の期限とがやがて同時にやってくる(図2参照)。例年より審査請求にかかる費用が増大するから、予め予算を組んでおく必要も有ろう。また、審査請求の件数が増加することにより中間処理の件数も増加する。この結果、社内の費用の増大や事務処理量の増大が予想されるので、予め対策を考えておくことをお勧めする。
現実的な対策としては、社内の費用の増大や事務処理量の増大を許容範囲内に抑えて、知的財産権の質と量を増大させるような仕組みを考えるべきであろう。
(1)出願時調査に基づく新規出願の厳正化
出願から3年では、審査請求率の減少は期待できず、新制度下の審査請求率は約80%位になると思われる。 出願時における特許性と権利性の評価は、ある一定のレベルの調査能力、判断能力を有すれば、比較的容易であろうが、経済性の評価は、出願から3年の期間経過時点では、なお困難なものが多いと考えられるからである。
新規出願の厳正化のためには、出願時の調査を行なって、その結果を反映した特許明細書を書き直した上で出願するのが良い。特許事務所に出願依頼をする場合も、出願時の調査結果を添付して、先行技術をクリアするような特許明細書に仕上げてくれるように頼むのが良い。そして、特許事務所の特許明細書案が仕上がった段階で、企業の特許担当者は、特許性と権利性棟の評価をした上で出願をするのが、活用される特許を取得することになり、出願件数の減少にも繋がろう。出願時調査に基づいたパーフェクトな出願であるならば、理屈の上では一つの出願で足りる場合も有り得よう。自信がないならば、多数出願して出願の束で、他社の後続出願に対抗しようとすることになろうが……。自信を持てる出願であれば、出願件数には余り拘らなくて良いのではなかろうか?21世紀に入って、出願の質と量により(特に質により)、知的財産の価値を評価する時代になっていると考えられる。上記により、出願件数が減少しても、知的財産権の価値を高めることができるからである。
(2)古い出願の審査請求の厳正化
出願から7年近くが経過している未審査請求出願(古い出願ともいう。)についての経済性の厳格評価は、比較的容易であろう。この間に事業化を断念した出願は権利化不要となり、審査請求率はかなり減少することが期待できる。古い出願の審査請求率は、今まで50%であったが、新制度下では、古い出願の審査請求率を40%以下程度に厳正化して業務の平準化を図るべきであろう。
(3)経済性の高い出願の早めの審査請求
経済性が高いことが判明した出願は、判明した時点でその都度早めに審査請求をするのが良い。既に公開されている場合には、戦略としては妙味がないであろうが、業務の平準化には多いに貢献しよう。新出願の中でも、経済性等が高いものは、出願と同時に審査請求し、併せて早期審査請求することにより、出願公開前に、権利化の目途を付けるのが良い。PCT出願し、サーチレポートや国際予備審査の見解の有効活用を図る戦略は既に述べてきた。かかる戦略は、有効な特許取得と同時に、業務の平準化が図れよう。経済性等が高いことが予め判明した出願は、判明した時点で早めの審査請求を行なうことは、手続ミスの事前回避にも繋がり、より積極的な早期権利化戦略に繋がるであろう。
3.3ウォッチング
旧制度下では、出願公開された審査請求未請求出願に対して、審査請求されるかどうかをウォッチングしなければならなかったが、今後7年間の予想滞貨案件(未請求案件)は約390万件(旧法の適用を受ける未請求案件が約210万件、更に積み上げられる改正法の適用を受ける案件が約160万件の合計約390万件が、大量処理されることになる。従って、古い案件は審査請求時、あるいは前倒しで厳格判断されることにより、権利化断念の未請求案件が多くなるのではなかろうか?一方、新制度下の出願件数は若干減少するが、審査請求率は約80%にアップすると思われる。今後7年以内に古い出願を中心に大量に滞貨処理がなされるであろうことは確実である。今回の改正法の趣旨が、大量の滞貨を処理することによって、第三者の実施の確保を図り、早期事業化を図る道を確保しようとするものだからである。問題出願のウォッチングにおいて、今後大量の滞貨が審査請求されないことによって、第三者が事業化するための自由度が拡大することが期待できよう。もっと積極的に事業化するための自由度を拡大するためには、情報提供、優先審査制度を活用して、障害となる出願を潰すこともできる。ただし、そのためには、先行引例から拒絶できる確信が持てる必要があろう。
また、我国で拒絶となった出願は、外国で特許になっていても無効理由となり得ることにも留意すべきである。
3.4外国における権利取得
我国は、早い権利保護の実現に向け、審査請求期間を国際水準並12)に短縮する法律改正を行った。
日米欧(三極で世界出願の1/4を占める。)の審査を経ずして安定した権利取得は困難である。新制度により、日本権利の確定を欧米並とすることにより、グローバルに安定した権利取得ができよう。13)諸外国に先駆けて特許性有りの審査結果を得た後、諸外国特許庁に日本の審査結果を提示すれば、特許となる可能性が大きくなると考えられるからである。14)
21世紀はグローバル化、情報化、メガコンピティション化が進み、我国の外国特許取得が質・量とも欧米の後塵を浴びることは大きな問題であろう。特許性有りの我国特許庁の審査結果を早期かつ安価に得る徹底した戦略を採ることによって、質・量とも欧米を上回る外国特許を取得を目指すべきであろう。我国の外国特許戦略が成功しなかった場合、「科学技術創造立国」日本が沈没していくことになろう。以下、具体的戦略を示す。
(1)PCT出願制度の活用
外国に直接出願することも考えられるが、ここでは、最近利用率が高くなったPCT出願の上手な活用法が、外国における権利取得に有効な方法であると考えられるので、以下説明する。
PCT出願をすれば、2ヶ月〜3ヶ月でサーチレポートが送付されてくる。そこで、自ら行なった出願時調査結果と比較検討することも可能であるし、さらに国際予備審査請求をすれば、国際予備審査の見解を得ることができる。出願人は、さらに面接を申し込むことができ、国内出願と違って、時間が許すかぎり何回でも審査官とやりとりをすることができる(PCT34条(2)(a)(c))。
面接を活用すれば、効率的かつ迅速に国際予備審査の肯定的見解を得る確率が高くなるであろう。
国内出願について、少し早めに優先権主張をして、PCT出願をして、サーチレポートを早めに受取ることができれば、国際公開される前に優先権主張を取下げること15)、あるいはPCT出願を取り下げることも考えられよう。これにより、国際公開を遅らせることができ、後のPCT出願を基礎にPCT出願をすること、あるいはPCT出願をやり直すことで権利化を図ることができよう。なお、PCT出願を代理人に出願依頼すれば、一出願当り約60万円程度の費用が掛かるが、自社出願すれば、約20万円(オフィシャル・フィーのみ)で、サーチレポート、国際予備審査の見解が入手できるので、投資対効果の点からも、非常に有効な戦略となり得る。
(2)早期審査結果取得出願に基づいた優先権主張
早期審査制度は、元々国内出願の早期権利化のための制度であるが、外国特許取得戦略にも活用できるので、以下紹介しよう。国内出願と同時に審査請求をすると共に早期審査制度を活用して、特許性有りの審査結果を早期に(出願から12ヵ月以内に)得ることである。ファーストアクションは、早期審査申請から平均3ヶ月〜4ヶ月であり、出願から12ヶ月以前に特許性有りの審査結果を得た場合、出願内容を吟味して「広く強い」特許取得ができることになれば、この国内出願に基づいた優先権主張をして外国出願(PCT出願を含む。)することは、安価で確実な外国特許取得戦略となろう。
(3)米国のIDS16) 制度について
旧制度下、米国での審査中に、我国の審査結果は送付されてくることは殆どなく、PCT出願のサーチレポートをIDSとして自動的に提出すれば良かった。しかし、新制度下では、米国での審査中に、日本の審査結果が送付されてきて、IDSとして提出しなければならないケースが増えるので注意を要する。特に、外国の担当と国内の担当が異なっている会社の場合には、外国担当は、国内出願が拒絶引例の送付を受けていることを知らないでIDSし忘れたということになれば、米国特許を取得しても有効な権利行使ができないということに陥るので注意を要する。
3.5ベンチャー企業戦略
  新制度は、知的財産権を資金調達に生かせる体制を構築するのに役立つ。例えば、知的財産権を担保とする融資をより円滑に進めるために、融資申請の対象となった出願の早期権利化を目指す大学、ベンチャー企業のために、早期権利化を図る新制度は大いに追い風になろう。そして将来的には、ベンチャー企業の特許取得に対して、資本金、従業員数、出願件数等に応じて出願時の費用負担を軽減する優遇措置の新設や、出願後の手数料についても出願内容に応じた優遇措置(仮称「知的財産権活用型技術振興制度」)を導入するなど、費用面における支援策を講じる道も期待できる。また、中小企業等の審査請求手数料も減額される。 ベンチャー企業は、上記の優遇措置等を活用して、早期権利化の戦略を強力に推し進めるのが良いであろう。
3.6出願公開と研究発表を考慮した戦略
出願公開も研究発表にしろ、公知発明化する点では同じである。特許制度の趣旨は、公開の代償として特許を付与するものである(特許法1条)。研究発表にしろ、出願公開にしろ公知発明になると、出願をやり直すというごく自然な対応を取り難くなるので、権利内容が優れた特許の取得が制限されることになる。発表については、十分な権利化が図れない期間は、絶対に発表しないことが特許戦略上重要である。どうしても発表せざるを得ない場合、基本的にはボカして発表することが必要であろう11)。公開については、PCT出願であっても、国内出願であっても、優先権の取下げ戦略によって、公開時期を遅らす戦略が可能となる。ただし、優先権の取り下げはリスクが有る点注意を要する。
3.7その他
早期高質出願から早期権利化が21世紀の我国の知的財産戦略のキーワードである。しかし、出願を急ぐ余り、出願の高質性を十分担保できないまま出願する場合が有る。このような場合、国内優先権を主張して出願するのが良い。基礎出願内容を包括するように後の出願明細書を作成することが重要である。
国内優先権主張を伴う出願については、後の出願日から3年ということになるので、国内優先権主張をすることによって、審査請求判断時を1年先送りする効果も有ることにも触れて置こう。

4.結論
審査請求期間の短縮化の新制度下では、積極的に早期権利化を図っていくという体制を徹底して構築することが戦略上重要であろう。積極的な早期権利化について、幾つかの具体策を提示してきた。
また、新制度下、審査請求対象となる滞貨が一時的に増大することになるが、各社とも予め予算化措置及び業務の平準化のための対策を考えておく必要が有ろう。
外国における知的財産権の価値(質・量とも)の最大化を図るべく、PCT出願、早期審査制度を活用して、早期かつ高質の外国特許を取得する戦略を示した。
問題出願のウォッチングについては、大量の滞貨出願が処理されることによって、第三者にとって事業の自由度が期待できる旨指摘した。

5.おわりに
最後に、本論説を纏める際しまして色々とお世話になりました関係各位には深く感謝の念を表します。


添付資料
知的財産権の評価

知的財産権の評価は、特許性、権利性、経済性の面から総合評価し、全てを備えた特許が良い特許であろう。
1.特許性
特許性は、出願が特許になるかどうかで評価する。特許になる可能性が大きい程、特許性の評価点は高くなる。特許性の評価は、先行文献と本出願の比較において、特許性の有無が判断できるのであり、少なくとも特許庁審査官並みの調査能力と判断能力が必要となるであろう。特許性・権利性の評価は、出願時であっても出願請求時であっても、それ程評価の困難性に差が有るものでもないであろう。
しかし、特許性の判断は、厳密には、審査前か審査後かの時期によっても異なる。強烈な拒絶理由通知又は強烈な異議申立てが有った場合は、特許性の評価点は低化して然るべきであろう。出願時の際は、出願時に出願公開された出願しか対象とならないため、拡大先願の地位(29条の2)、先願主義(39条)が判断されない場合が有る点にも注意を要する。
2.権利性
権利内容は、「広い保護」、「強い保護」で評価されるべきであろう。
2.1広い保護を受ける特許(広い特許)
広い特許とは、権利内容が広い特許のことをいい、具体的には以下のようなものが広い特許であろう。
(1)SIMPLE IS BEST(多記載狭範囲の原則)
セールスポイントを手短にクレームに記載することが広い特許を取得する上で重要である。発明者は、多記載クレームの方が技術的に高度であり、特許としては多記載クレームの方が高度であるとよく勘違いし勝ちであるが、それは間違いである。
(2)水平展開、垂直展開
水平展開、垂直展開を考慮して広い特許を取ることである。水平展開は、例えば物の発明であれば、その物の製造方法、その物の用途発明等の関連分野までも特許が取れないかと発明思考の水平展開を図ることであり、垂直展開とは、下位概念から上位概念を抽出して発明思考の垂直展開を図ることである。
また既に構築した自社の特許網を、パテントマップの手法を用いて水平展開、垂直展開を図り、フロンティアを開発して、さらに「良い特許網」を構築するのが良い。
(3)その他
クレーム表現が悪い場合には、狭い特許しか取れないので、クレームの表現にも留意する必要があろう。プロダクトバイプロセス、ファンクショナルクレーム、マーカッシュ形式等の出願は、現時点では裁判所において広く解釈されるか狭く解釈されるかは問題含みであり、狭い特許しか取れないおそれも有る。
2.2強い保護を受ける特許(強い特許)
強い特許とは、訴訟の際に強い特許のことをいうものであろう。具体的には以下のものが強い特許であろう。
(1)立証し易い内容のクレーム
一般的には、方法の特許よりも、物の特許の方が強い特許であると言われている。なぜならば、製造方法の発明は、工場に立ち入り検査等をしなければ立証できないが、商品は市場に出廻っているので誰でも容易に入手でき立証が容易だからである。
(2)新規物質(製造方法、用途を含む)は必ずクレームアップ
公知物質の製造方法の発明は、強い特許ということはできず、日本ではノウハウとして保持すべき特許ともいうべきであろう。一方、米国では、ディスカバリー手続で保護されるから、例え公知物質の製造方法の発明であっても特許価値はそれなりにあろう。
(3)高金額の対象物のクレームアップ
請求項については上から下に行くに従って高金額化となるようクレームアップすることをお勧めしよう。 訴訟の際(実施交渉の際も同様)、対象になるのはクレーム記載の発明であり、クレームに低金額なものの発明しか記載していなかった場合、少なくとも高金額のものが対象となることは絶対に有り得ない。 素材特許等の場合には、素材→部品→完成品の順にクレームアップするのが良かろう。
(4)スキのない特許
個々には広くて強い特許であってもスキがあっては駄目な特許であり、特に広過ぎる特許の場合はスキのない特許にすべくパテントマップ等を利用して特許を取るようにすべきである。
・特許明細書を見て後発メーカーはあきらめてくれるのが一番良い。 スキのない特許では、特許の人間も開発の初期段階から開発の人間と一心同体となり、徹底した特許調査と読みに読んだスキのない特許明細書に仕上げることに全力を尽くすことがより重要であろう。
・実施例について
効果の予測が困難な化学発明にあっても、実施例は最低一つあれば特許法第36条で拒絶されないこととなっている。しかし、広いクレームに比較して、実施例が少な過ぎる場合は、後発メーカー等が選択発明、数値限定発明等の改良特許を取る可能性を残すという意味でスキの有る特許ということができよう。従って、実施例は万遍なく散らばらしてスキを造らないようにするのが良い。
3.経済性の評価
(1)経済性の評価(正味現在価値評価法)
経済性評価の一つとして、正味現在価値評価法が考えられる。正味現在価値評価法(NPV:net present value method)とは、投資の収益性と貨幣の時間価値の双方を考慮に入れた投資の評価基準であり、欧米の企業では積極的に用いられる方法である。この方法は、先ず、投資プロジェクトからもたされる毎期のキャッシュ・フローを予測し、このキャッシュ・フローをそれぞれ資本コストで割り引いて現在価値(PV:present value)を求め、合計する。次に、そのプロジェクトに向けられる投資額の現在価値(PI:present investment)を算出する。そして、合計PVからPIを差し引いて求められる正味現在価値で投資プロジェクトの採否を決定するものである。
NPVが正であれば、株主の富が増大するため投資は実行可能となり、反対に負であれば投資は却下される。
キャッシュ・フローの現在価値の合計PVは、次の算式で求められる。
PV=CF1/(1+k)+CF2/(1+k)2+CF3/(1+k)3+……CFn/(1+k)n……(1)
ただし、CFtはt期の キャッシュ・フロー、kは貨幣の時間価値とリスクを考慮した資本コスト(割引率)である。
次いで、投資額の現在価値の合計PIは、次の算式で求められる。
PI=Io+I1/(1+r)+I2/(1+r)2+I3/(1+r)3+……In/(1+r)n……(2)
ただし、Ioは初期投資額、Itはt期の 投資額、rは投資額の割引率である。
正味現在価値NPVは、
NPV=PV−PI……(3)
利益額に対しての知的財産権のキャッシュ・フローは、事業のキャッシュ・フローの1/3とすれば良いと思われる。何故ならば、知的財産活動の貢献は1/3で取り扱われるからである。17)
審査請求をするか否かを判断する場合、Ioは審査請求費であり、拒絶対応費(異議対応費用を含む)、特許料(設定特許料、維持年金費用)等が、I1〜Inとなろう。
(2)経済性の評価と審査請求率との関係
製品は、開発期→導入期→成長期→成熟期→衰退期の製品ライフサイクルを経る。商品の売上高は、S字成長曲線で表現できる。審査請求が不要となる出願件数、審査請求が必要となる出願件数も共に、S字成長曲線と密接な関係が有る。従って、正味現在価値と審査請求率とは密接な関係が有る。審査請求が不要となる出願とは、出願後事業化断念により、権利化が必要無くなったとか、出願後経済性調査してみたら出願審査請求して権利化を図る程の収益を上げ得ないことが判明した等の出願である。正味現在価値法の経済性評価に基づいて、予想される審査請求率は、図2のようになるものと予測される。審査請求期間を極端に短縮して0年とした場合(出願と同時審査請求する場合)、審査請求率は100%である。審査請求期間が7年の場合は、約50%である。結論としては、出願から3年以内の審査請求では、経済性が疑わしい場合、「疑わしきは審査請求をする」ということで、審査請求率は高くなるであろう。


注記
(1) 広い保護に関しては、ボールスプライン事件最高裁判決において、我国でも最高裁において原則として「均等論」が認められることとなった。 特許庁も、ソフトウェアを記録した媒体について特許権の対象とされ(平成9年2月の審査基準改訂)、 ビジネスモデル特許についても特許権の対象となっている。強い保護に関しては、損害賠償額の算定方式の見直し等を柱とする「特許法等の一部を改正する法律」(平成10年4月成立)において実現し、裁判所においても体制強化の観点から、東京地裁に知的財産権の専門部を平成10年4月に1部増設して2部とした。 平成10年10月の薬(H2ブロッカー)を巡る特許権侵害訴訟で、東京地裁から過去最高である約30億円の損害賠償額を認容する判決が出された。早い保護に関しては、 ペーパーレス化の対象を意匠、商標等へ拡大、公開前審査やパソコン出願の実施(平成10年) 、2000年までに第一次審査期間を12月(FA12)とすべく審査処理を迅速化等が図られた。最新の技術情報の宝庫である特許情報の活用のため、インターネットで4000万件の特許情報を提供する「特許電子図書館」が構築されており、簡便な出願時調査が可能となっている。
(2) 我国の知的財産権の質と量の確保とは、1出願件数当りの価値*出願件数を最大化するようにプロパテント政策を採ることによって達成されよう。ただし、当面の間は、出願件数を1出願件数当りの価値をアップさせて、全体の知的財産権の質と量の確保を図ることが現実的な戦略となろう。
(3) 殆ど特許性がない理不尽な出願であっても、ハッキリ特許性がないと断言することは余程自信がないとできず、発見された出願は、「審査請求されたら、情報提供等の対応を取ることにする。」ということになり、結局は、取りあえず問題出願として、ウォッチングすることになる。
(4) 出願日とは、国内優先権主張を伴う出願においては、後の出願日をいい、分割出願においては、原出願日をいう。
(5) 今回の審査請求期間の短縮に関して、原案は出願から2年でEPO並みになっていたが、企業側にとって他社出願の調査期間が必要なこと、我国は欧州特許庁のようにサーチレポート制度を有していないこと等により3年となった。ただし、私見ではあるが、出願と出願請求時ではそれ程、特許性の評価の精度に差が有るものでもなく、出願時2年以内に審査請求するEPに揃えて置いた方が良かったのではないだろうか?
なお、PCT出願の国際予備審査をした場合の国内移行手続をするか否かの判断は優先日から2年半である。
(6) 「敵を知り己を知れば百戦危うからず」の諺通り、出願時調査は特許戦略上非常に重要である。出願時調査をすることにより、以下のメリットが考えられる。
(1)類似技術記載の先行文献を発見した場合には、出願時にその類似技術との差を明確にして、特許性を高めることができる。
(2)同一技術記載の先行文献を発見した場合には、出願を断念し、代わりに改良発明の出願をすれば、無駄な費用削減と有効な権利取得を図ることができる。
(7) 審査請求制度は、昭和45年に出願公開制度と同時に導入されたが、導入趣旨の一つは、真に権利化の必要な出願のみ審査請求をすることによる滞貨の一掃であった。今回の法改正の趣旨の一つが、滞貨の一掃を図ることでもあるのも奇異な感じがしないでもない。
(8) 早期審査制度は、外国での特許の質と量の確保を図るためには、外国出願している場合よりも、外国出願をしようとする出願の方に適用するべきではなかろう?さらに、早期審査申出の際に、外国出願しようとする出願人は、手数料(現在の運用は無料)を支払っておいて、外国出願した後に返還を受けるシステムが望ましいのではなかろうか?大企業の出願であっても、実施していなくても、早期審査制度を活用する場合は有るのであり、活用できる道を確保すべきではなかろうか?
なお、大企業であっても、出願は個人名で出願して、早期審査請求をして早期権利化を図り、後で譲渡する戦略は考えられよう。
(9) 特許庁としては、2000年を目途に「ファーストアクション(1次審査終了)12ヶ月」の実現を目指している。
(10) 佐藤富徳著「特許48手物語」知財管理Vol.50,NO.6,2000の【第13手】発表は奥床しく発表し、全てを喋らないこと”を参照のこと。ホカシて発表するテクニックを具体的に記載している。
(11) 未公開の出願の後願排除効(特許法29条の2)は、同一範囲だけであるが、公開された出願の後願排除効は、もっと広い自由技術範囲となる。
(12) 各国の審査請求請求期間について、比較表を以下のように纏められる。
7年という長期の審査請求期間は日本とドイツのみである。 今後、日米欧の三極特許庁が世界の審査の中核を担い、グローバルに安定した権利設定を行っていくためには、欧米に見合う審査請求期間とする必要が有る。
諸外国の審査請求制度
審査請求期間
国   名
請求制度なし
米国
2 年
欧州特許庁、英国、ポーランド
3 年
中国、チェコ、ロシア、アルゼンチン、インドネシア
5 年
韓国、豪州、カナダ(*1)
7 年
日本、ドイツ(*2)
(*1)1996年に7年〜5年に短縮されている。
(*2)ドイツでは初年度請求が全請求件数の約2/3を占めているが、我国では初年度請求が
全請求件数の約1割、6、7年度請求が約5割となっている。
(13) 世界で一番厳格な日本特許庁の審査で、特許性有りという審査結果を外国に先駆けて受取った場合、外国での権利化は、自信を持って押し進めることができる。逆に、外国では特許となったのであるが、日本では、審査請求したが思うような特許が得られなかったような場合には、国際特許戦略上の悔いが残るのではなかろうか?また、我国の特許性ありとの予備審査結果は、各国国内段階の審査でも尊重されるであろう。EPでも我国の国際予備審査結果は尊重されると明記されている(欧州特許庁審査便覧C部第Y章、10.において準用するE部第\章、6.4)。
(14) 各国は特許独立の原則の遵守義務が有るが(パリ条約4条の2)、現実には、日本の特許査定謄本を外国特許庁へ提出すればその国で特許となる確率が高くなると考えられよう。
(15) 出願人は国際調査報告の先行文献リストを見て、PCT出願Aの特許性を自主的に判断し、特許性が無いと判断した場合、PCT出願Aの発明aの改良発明bをすることが大切である。この場合、国内出願A0を基礎とする優先権主張を取下げて、PCT出願Aを基礎としたPCT出願Bをすることもできる。優先期間が経過していても、優先権主張を取下げれば、PCT出願Aに基づくPCT出願Bを行うことができる。優先権主張の取下げと組み合わせたPCT出願は、非常にフレキシビリティが高い戦略が可能になる。国際公開の準備期間経過前に優先権主張を取下げると、最大12ヶ月国際公開を遅らすことができる。PCT出願Aの特許性、経済性、権利性の全体評価が困難の場合で、かつ国際公開による公開デメリットが大きい場合には、リスクは負うが、優先権主張を取下げて国際公開を遅らす戦略も有り得る。なお、優先日から1年3ヶ月前に優先権主張を取下げると国内出願A0がそのまま係属し得るので、出願公開を回避すべく国内出願A0も取下げておくべきである。(図3を参照)
(16) IDS(Information Disclsure Statement)制度とは、出願日から3ヶ月内等に先行技術文献を米国特許庁に提出する制度をいう。IDSを提出し忘れた場合には、米国での権利行使ができなくなる。
(17) 利益額を上げ得たのは、資金力、組織力、特許権の3つにより得られるものと考えて、特許権の寄与分を利益額の1/3とするものである。これを裏付ける判決として、東京地判 昭和37.5.7 下民集13巻5号972頁「鉄筋コンクリート構築物の構築法」が有る。
  なお、3分法に類似する考え方として、4分法が有る。4分法は、利益額を上げ得たのは、資本力、組織力、特許権、協力者の4つにより得られるものと考えている。米国の25%ルールにも呼応するものと考えられる。

以上
関西特許情報センター振興会ニュース 1
特許事務所 富士山会 弁理士・行政書士 佐藤富徳




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