(書誌+要約+請求の範囲)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平5−202930
(43)【公開日】平成5年(1993)8月10日
(54)【発明の名称】軸受の異常監視方法および装置
(51)【国際特許分類第5版】
F16C 17/24 8613-3J
F01D 25/18 E 7114-3G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願平3−51127
(22)【出願日】平成3年(1991)3月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 繁夫
【住所又は居所】大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】延原 臣夫
【住所又は居所】大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎 (外1名)
(57)【要約】
【構成】 軸受3に潤滑油を循環して供給し、この軸受3の前記潤滑油の入口温度T1、出口温度T2、循環流量q、大気温度T0、回転軸6の回転数Nを計測して軸受3に発生する熱量Qを演算して求め、この熱量Qに対する変化熱量△Qに基づいて軸受が異常であると判断する。
【効果】 潤滑油を常時監視でき、これによって異常発生時の早期検出を可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸受に潤滑油を循環して供給し、この軸受の前記潤滑油の入口温度T1、潤滑油の出口温度T2、潤滑油の循環流量q、大気温度T0、軸受によって支持される回転軸6の回転数N、潤滑油の熱伝達係数CA、および潤滑油の比熱Cに基づいて、軸受に発生する熱量Qと、この熱量Qに対する変化熱量△Qとを演算して求め、この演算によって求められた熱量Qと変化熱量ΔQとに基づいて軸受の異常を判断することを特徴とする軸受の異常監視方法。
【請求項2】 軸受に潤滑油を循環して供給し、この軸受の潤滑油の入口温度T1を検出する第1温度検出器S1と、前記軸受の潤滑油の出口温度T2を検出する第2温度検出器S2と、大気温度T0を計測する手段S3と、前記軸受によって支持される回転軸6の回転数Nを検出する回転数検出手段14と、前記循環して供給される潤滑油の流量qを計測する流量計測手段10と、前記入口温度T1、出口温度T2、回転数N、および流量qを記憶するための第1メモリM1と、第1メモリM1に記憶された記憶内容に基づいて、潤滑油の熱伝達係数をCAとし、および潤滑油の比熱をCとしたときの前記軸受に発生する熱量Qを演算して求める演算手段15と、この演算手段15によって求められた熱量Qを記憶するための第2メモリM2と、前記演算手段15からの出力に応答して、前記熱量Qと、その熱量Qに対する変化熱量ΔQとに基づいて、軸受の異常状態を表示する手段16とを含むことを特徴とする軸受の異常監視装置。
詳細な説明
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえば滑り軸受などの異常状態を検出するためなどに好適に実施することができる軸受の異常監視方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ころがり軸受に関しては、音あるいは振動などを常時検出し、それらが予め定めるしきい値を超えた場合には異常信号を出力する異常監視方法が周知である。この方法では、図5のラインL1において、参照符W1で示される比較的故障率が高い範囲にならないと、その軸受の異常が検出されないため、軸受の異常を早期に検出することができないという問題を有する。
【0003】このような問題を解決するために他の先行技術では、軸受に供給される潤滑油を採取して、その潤滑油中の金属摩耗粉などを顕微鏡によって観察するフェログラフィ法が用いられている。この方法では、図5の参照符W2で示される比較的故障率の低い範囲における軸受の異常を検出することができる。しかしながらこのような先行技術では、その都度、潤滑油をサンプリングする必要があり、前記潤滑油を常時監視することができないという問題を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目的は、潤滑油を常時監視して、軸受の異常を早期に検出することができるようにした軸受の異常監視方法および装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、軸受に潤滑油を循環して供給し、この軸受の前記潤滑油の入口温度T1、潤滑油の出口温度T2、潤滑油の循環流量q、大気温度T0、軸受によって支持される回転軸6の回転数N、潤滑油の熱伝達係数CA、および潤滑油の比熱Cに基づいて、軸受に発生する熱量Qと、この熱量Qに対する変化熱量△Qとを演算して求め、この演算によって求められた熱量Qと変化熱量ΔQとに基づいて軸受の異常を判断することを特徴とする軸受の異常監視方法である。
【0006】また本発明は、軸受に潤滑油を循環して供給し、この軸受の潤滑油の入口温度T1を検出する第1温度検出器S1と、前記軸受の潤滑油の出口温度T2を検出する第2温度検出器S2と、大気温度T0を計測する手段S3と、前記軸受によって支持される回転軸6の回転数Nを検出する回転数検出手段14と、前記循環して供給される潤滑油の流量qを計測する流量計測手段10と、前記入口温度T1、出口温度T2、回転数N、および流量qを記憶するための第1メモリM1と、第1メモリM1に記憶された記憶内容に基づいて、潤滑油の熱伝達係数をCAとし、および潤滑油の比熱をCとしたときの前記軸受に発生する熱量Qを演算して求める演算手段15と、この演算手段15によって求められた熱量Qを記憶するための第2メモリM2と、前記演算手段15からの出力に応答して、前記熱量Qと、その熱量Qに対する変化熱量ΔQとに基づいて、軸受の異常状態を表示する手段16とを含むことを特徴とする軸受の異常監視装置である。
【0007】
【作用】本発明に従えば、軸受に潤滑油を循環して供給し、この軸受の潤滑油の入口温度T1、出口温度T2、潤滑油の循環流量q、大気温度T0および軸受によって支持される回転軸の回転数Nが計測され、そのときの潤滑油の熱伝達係数CA、潤滑油の比熱Cを既知量としてその軸受に発する熱量Qを演算して求め、この熱量Qと熱量Qに対して変化した熱量△Qとに基づいて、この変化熱量ΔQが予め定める値以上になったとき、軸受に異常状態が発生したものと判断される。
【0008】このようにして潤滑油の入口温度T1、出口温度T2、流量q、回転数N、大気温度T0を常時計測して、前記変化熱量Qが予め定める値以上であるか否かを連続的に監視することができ、これによって軸受の異常を早期に発見することができる。
【0009】請求項2記載の本発明に従えば、軸受の潤滑油の入口温度T1が第1温度検出器S1によって検出され、また出口温度T2が第2温度検出器S2によって検出される。また軸受によって支持される回転軸6の回転数Nは回転数検出手段14によって検出され、潤滑油の循環流量qは流量計測手段10によって計測される。第1メモリM1には、前記入口温度T1、出口温度T2、回転数N、大気湿度T0および流量qが記憶される。このような第1メモリM1に記憶された記憶内容に基づいて、演算手段15によって潤滑油の熱伝達係数がCAおよび比熱がCであるときの軸受に発生する熱量Qが演算して求められ、その変化熱量ΔQに基づいて軸受に異常が発生したものと判断され、前記演算手段からの出力に応答して、表示手段によって前記異常であることが表示される。
【0010】
【実施例】図1は、本発明の一実施例の系統図である。ポンプ1によって循環管路2内を循環される潤滑油は、滑り軸受3に供給される。この軸受3は、メタルカバー20によって覆われる外輪4内に同軸に配置される軸受メタルとよばれる内輪5を有し、内輪5内には回転軸6が回転自在に支持される。滑り軸受3の循環方向A上流側の入口7近傍には第1温度検出器S1が設けられ、この温度検出器S1によって循環管路2内を循環する潤滑油の入口温度T1が検出される。また滑り軸受3の前記循環方向A下流側の出口8付近には、第2温度検出器S2が設けられ、この温度検出器S2によって循環管路2内を流れる潤滑油の出口温度T2が検出される。循環管路2の前記ポンプ1よりも循環方向A下流側には熱交換器9が設けられ、管路10に供給された冷却水と熱交換を行って、前記滑り軸受3によって昇温された潤滑油が冷却される。この熱交換器9よりも循環方向A下流側であり、かつ前記第1温度検出器Sよりも循環方向A上流側には、循環管路2内を循環する潤滑油の流量を計測するための流量計10が設けられ、この流量計10によって流量qが計測される。
【0011】図2を参照して、前記回転軸6に関連して設けられる回転数検出手段14、大気温度検出器S3、第1温度検出器S1、第2温度検出器S2、および流量計10からの各出力は、第1メモリM1の各記憶領域に個別的に記憶され、演算手段15において異常判断の評価関数として、求められる。
【0012】すなわち、滑り軸受3の熱平衡状態は下記のようになる。
【0013】ここで、潤滑油の出入口温度をそれぞれT1,T2、潤滑油の比熱C、流量q、回転軸6の回転数をN、冷却系の冷却温度をQc、大気温度をT0、大気へ逃げる熱量をQ0、回転軸6が回転することによって発生する熱量をQとするとき、正常時における熱量の平衡状態は、
【0014】
【数1】Q=Q0+Qcの関係式が成立し、発熱量Qは、回転数Nの関数となるため、滑り軸受の型式が決まると次式が既知の関数として定まる。
【0015】
【数2】Q=Q(N)
また、大気へ逃げる熱量Q0は、冷却配管系からの熱損失と考えられ,同様に冷却配管系が決まると、次式が既知の関数として定まる。
【0016】
【数3】
Q0≒CA・{(T1+T2)/2 − T0 }
ここにCAは、熱伝達係数で定数である。
【0017】冷却熱量QCは、次式で与えられる。
【0018】
【数4】QC=C・q・(T2−T1)
数2、数3、数4を数1に代入すれば、正常時には、以下の式が成立する。
【0019】
【数5】
Q=CA・{(T1+T2)/2 − T0}+ C・q・(T2−T1)
しかし、異常時には、熱量がQが変化量△Qだけ変化して正常時の状態からずれる。この変化量を正規化した値Kは、
【0020】
【数6】K= △Q/Qで異常変化率として監視すればよい。
【0021】△Qは、数5より、
【0022】
【数7】
△Q=CA・{(T1+T2)/2−T0}+C・q・(T2−T1)−Q(N)したがって、
【0023】
【数8】
K= ΔQ/Q ={CA・{(T1+T2)/2−T0}+C・q・(T2−T1)}/Q−1このように数8の演算を行って変化率Kを求め、この変化率Kが予め定める値K1以上になったとき、軸受3に異常が発生したものと判断される。このような予め定める値K1は、第2メモリM2に記憶されており、各値K,K1は、表示手段16によって図3に示されるように、K値をラインL2で示し、K1値をラインL3で示すグラフによって記録紙19上に折れ線で表示するようにしてもよい。また、この表示手段16は、たとえば陰極線管あるいは液晶表示素子などによって実現するようにしてもよい。この場合には、図4に示されるように、表示手段16の表示画面20に各数値T0,T1,T2,N,q,K,K1をそのまま表示するようにしてもよい。
【0024】前述した実施例では、滑り軸受について説明したけれども、ころがり軸受に関してもまた、本発明を好適に実施することができる。また各熱量Q,ΔQに基づいて、それらの変化率Kだけでなく、温度差(T2−T1)によって軸受の異常を判断するようにしてもよい。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、軸受に循環して供給される潤滑油の入口温度T1、出口温度T2、循環流量q、大気温度T0、回転軸の回転数Nを計測して演算し、その軸受の熱量の変化量に基づいて異常の発生を判断するようにしたので、その軸受を常時監視することができ、早期に異常の発生を検出することが可能となる。
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